【掲載】書籍『ワインの自由』(堀賢一氏 集英社1998)
『ソムリエ4巻』(原作:城アラキ氏、漫画:甲斐谷忍氏、監修:堀賢一氏 集英社1997)
畑の個性を取り戻す努力
「ブルゴーニュのある特急畑の土を調べたところ、その1g中に生息する微生物数はサハラ砂漠のものよりも少なかった」クロード・ブルギニヨン(フランスにおける土壌微生物学の権威)
『ワインの自由』堀賢一 集英社1998より引用
このコラムは、上記のセンセーショナルな言葉から始まります。
実際、農薬が最先端と思われていた時代、日本では農家がヘリから農薬をまいていた映像が流れたりしますが、フランスも同様で、ぶどう畑は農薬まみれだったと聞くことがあります。
残留農薬による一般消費者への健康上の問題、畑で働く人への健康上の問題などから、農薬の過度な使用は見直され、逆に有機農法の導入が始まります。堀氏は
有機農法とは本来、殺虫剤、防カビ剤、化学肥料などの合成化学物質を全く使用しない農法を指します
『ワインの自由』堀賢一 集英社1998より引用
と書いています。
もちろん、健康上の問題だけのために導入されているわけではなく、畑の土が本来持つ栄養素や微生物を取り戻すことが目的だと思います。栄養素に関しては、有機物によって補う意味もあるのでしょうか?
また、コラム中にも書かれているように、化学肥料の撒かれた畑は、ぶどうの根は肥料のある表土に広がってしまい、地中深くに根を伸ばさなくなります。結果、ぶどうの根が吸収する養分は肥料の養分ということになり、フランスの地表は何層にも分かれていると私たちが本で読むような地中深くの様々な土からの養分を吸い上げないことになります。
つまり、土壌によるワインの個性が薄れるわけです。堀氏は、最後にルロワが1989年から有機的な栽培に切り替えたことによって、ワインには再びテロワールが戻ったのみならず、ぶどうの果実を食べるだけで、どの畑のものかわかるようになってきたと言っていると紹介し、
ブルゴーニュの畑は戦前の状態に戻ろうとしています
『ワインの自由』堀賢一 集英社1998より引用
とコラムを締めくくっています。
フロッグス・リープ
この有機農法について、Vintage28「レストランデート」では話題になっていませんし、コラムで紹介しているワイン「フロッグス・リープ ジンファンデル」も作中に登場したわけではありません。
基本的にコラムや紹介ワインは、マンガ中の話題と連動しているのですが、時々こういう回があります。
やはり堀氏もどんなコラムを書くか迷い、作中と関係ないことも書くしかない時があるのだろうなぁと想像します。
コラム中でフロッグス・リープは、カリフォルニアの有機栽培の先駆けとして紹介されています。設立者のジョン・ウィリアム氏はスタッグス・リープの創立時の従業員だったこととワイナリー設立当時の場所がカエル養殖場だったことから、フロッグス・リープとワイナリー名をつけます^^
それから、カリフォルニアではいち早く有機農法に取り組み、ぶどうのみならず働く人や周囲の環境にまで気を配るサスティナブル・アグリカルチャーに取り組んで、バイオダイナミクスを導入しています。サスティナブル・アグリカルチャーに関連してワイナリーは太陽光発電で運営しているらしく、まさに自然派です!!
ナパ・ヴァレーのフロッグス・リープ・ワイナリーはカリフォルニアにおけるブドウの有機栽培の先駆者的存在で、現在350haにも及ぶ、オーガニック・ヴィンヤードから秀逸なワインを生み出している。自然であることを信条とし、醸造においても培養酵母を用いず、自然酵母だけで発酵させ、二酸化イオウも最低限しか使わない。
『ワインの自由』堀賢一 集英社1998より引用